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ケーススタディ

3Dテクノロジーを活用したさまざまな事例をご紹介します。

対談 : ヴァンサン・フルニエ x 久米原勝

アーティスト

作品とヴァンサン・フルニエさんと久米原打ち合わせの写真宇宙・ロボット・遺伝子操作などのテクノロジーをテーマに活動する写真家・映像作家のヴァンサン・フルニエさん。DIESEL ART GALLERY(東京・渋谷)で開催されている個展「ARCHEOLOGY OF THE FUTURE」(2014年8月22日~11月14日)に当社が協賛し、唯一の3Dプリント作品「ROBOTIC JELLYFISH DRONE [Cyanea machina]」の制作を担当しました。架空の「新種の生物」を百科事典の図版のスタイルをとって表現したPOST NATURAL HISTORY(続・自然史)プロジェクトのシリーズの中でも唯一の3Dプリント作品です。

写真家として活動するフルニエさんがなぜ3Dプリント作品を制作したのか。個展にあわせて来日したフルニエさんを、iJet CEOの久米原勝が訪ねました。



試行錯誤の末にたどりついた3Dプリント

ROBOTIC JELLYFISH DRONEの写真久米原  POST NATURAL HISTORYプロジェクトの一連の写真作品をみていると、思わず3Dプリントで制作してみたくなりますね。

フルニエ  本当ですか? おもしろいですね。

久米原 見たことがない生き物のはずなんですが、本当にこういう種が実在するかのように思えますね。

フルニエ このシリーズは、動物や植物が環境の変化に耐えられるように、人工的に遺伝子を組み換えた未来の新種をイメージしたプロジェクトなんです。そのひとつとして制作したのが、今回3DプリントをしていただいたROBOTIC JELLYFISH DRONEです。
実は、最初はウサギの骨で制作していたんです。

久米原 へえ! そうなんですね。
このプロジェクトは、この作品以外は写真ですよね。この作品だけが3Dプリントで制作した立体作品です。特別な意味合いの作品なのでしょうか。

フルニエ そうですね。もともとぼくは写真が専門。当初はウサギの骨でつくったオブジェクトを撮影して、このプロジェクトの他の作品と同じように、写真をPhotoshopで加工して制作しようと思っていたんです。ウサギとクラゲを融合したものというイメージがあって、ウサギの骨で制作していたんです。でもなかなかうまくいかなかったんです。また、試行錯誤をする中で、写真ではなくて立体作品をつくってみたいと思い始めたんですね。そうしていろいろ調べていくうちに、ウサギの骨を3Dデータにすれば、思い描いていたイメージを形にできることに気づいたんです。データならば拡大や縮小もできるし、3Dプリントで立体作品を制作できます。それで、ウサギの骨をばらして3Dデータにして、コンピュータ上でレゴブロックのように形作っていったんです。

久米原 それはすごいですね。

フルニエ でも、もしウサギの骨でイメージを形にすることができていたら、3Dプリントで制作することはなかったかもしれませんね。

久米原 あくまでもイメージを形にする手段として3Dプリントを選んだということですね。

フルニエ そう。目的はあくまでもイメージを形にすること。だから、3Dアニメーションをつくるというようなことではないんです。立体作品をつくるために3Dプリンタを使い始めたんです。



3Dプリントと写真の意外な共通点

久米原 3Dプリントの仕上がりはいかがですか。

フルニエ フランスで初めてプリントした時に比べて、表面が滑らかでソフトな印象です。
写真がプリントの仕方で違った作品になるように、3Dプリントも仕上がりが微妙に違う。同じ3Dデータなのに違いが生まれるのはおもしろいですね。このクラゲは日本で生まれたから、フランス生まれとは少し違うということかな(笑)。 仕上がりにはとても満足していて、あらためてお礼を言わせてください。ありがとうございます。

久米原 いいえ、こちらこそありがとうございます。フルニエさんの作品を制作できて光栄です。
ところで、3Dプリントのことを知ったのはいつ頃なんですか。

フルニエ もともと最新のサイエンスやテクノロジーには興味があって、3Dプリントも以前から知っていたけど、当時はあまり興味がなかったんです。ぼくは写真家で、3Dプリントはあまり関係がないと思っていたんですね。
ところが、この作品の制作中、ウサギの骨で試行錯誤をしているときに友人から3Dプリントなら実現できるんじゃないかという話を聞いて。でも、彼は彼で、3Dプリントをアート作品の制作に使うことは考えたことがなかったんですね。それで、お互いにおもしろそうだから一緒にやってみようという話になって、3Dデータでの制作に取り組んだんです。それが2年前の2012年ですね。
その後、今度は3Dという技術からアイデアを得て新たなプロジェクトが生まれました。それがSYNTHETIC FLESH FLOWERSなんです。

久米原 なるほど、そういうことなんですね。

フルニエ そうやって3Dプリントでの作品を制作していて感じたのは、写真にすごく近いということです。 写真が世の中に初めて登場した時、ある人たちは、「これでもう絵画は必要なくなる」と言ったのだと思います。でも、いまでも絵画は世の中にあるし、これからも価値ある存在であり続けるでしょう。一方で、写真もさまざまな表現を生み出しています。
3Dプリントのテクノロジーが登場して、彫刻家は必要なくなると言う人がいるかもしれません。あるいは、3Dプリントの作品は彫刻作品ではないと言う人がいるかもしれません。でもこれまでのような彫刻はこれからもあり続けるでしょうし、3Dプリントで新たな表現も生まれています。そういう意味で、3Dプリントと彫刻の関係は、写真と絵画の関係とよく似てるんです。

久米原 なるほど、おもしろいですね。3Dプリントで彫刻に新たな表現手法が生まれるかもしれませんね。CGが使えなくても、彫刻家が自分の作品を3Dスキャンでデジタルデータにして、デジタルデータで何かを加えて、3Dプリントで現実の作品に戻す。そうやって新しい表現を生み出すこともできるのではないでしょうか。



3Dプリントの未来


久米原 私たちは、3Dプリンタの将来性を感じて2009年に起業しました。フルニエさんは3Dプリントのどんなところに将来性を感じていますか。

フルニエ たとえば、手元にあるモノをスキャンして、遠くの誰かのところで3Dプリントしてモノが届く。SF映画のテレポーテーションのようなことができるようになるかもしれない。そんなことが3Dプリントで実現したら、モノの概念が変わるんじゃないかな。
久米原さんは、3Dプリントで社会がどんなふうに変わると思いますか?

久米原 先ほどの彫刻家と3Dプリントの話にたとえれば、いままでは彫刻の技術がある人しか彫刻作品をつくることができなかった。ところが3Dプリントのテクノロジーによって、3Dデータをつくることができる人が彫刻をつくることができる。3Dプリントのテクノロジーは、フルニエさんのようにイマジネーションを持っている人の可能性を広げることができるんです。人のポテンシャルを広げるということですね。でも、いまはまだ3Dデータを制作するのは難しい。将来、音声認識のように、脳波でデータを作ることができるような未来が来たらいいなと思っているんです。そうすれば、3Dプリントが多くの人にとって、もっと身近な存在になると思うんです。


2014年8月21日 DIESEL ART GALLERYにて